マーラー 交響曲第9番ニ長調
今や、マラ9マラ9と親しんでいるこの曲も、お茶管に入団した当時は知らなかった
し、ほんの1年半くらい前までは、グチャッとした印象しかなくて、正直よく分かりませんでした。
それに、マラ9の演奏は1枚のCDに入りきらないくらい長い・・・。
どんな曲なんだろうと聞き始めた時には大抵、楽章の途中を早送りで聞いてしまったり。
長押しすべきところをうっかり軽いタッチで押して、トラックが進んでしまった時なんてもっとひどい。
けれど、何度も何度も繰り返して接している内に、「あ、ここいいな」とか「こんなとこあったんだ」と
いう風に、自分なりの好きなところができてくる。不思議なものです。
ご存知のように、交響曲を書いた作曲家はたくさんいますが、9番のジンクスとでもいうのでしょうか。
有名な作曲家の多くが、第9番を仕上げた後に亡くなっているのです。
例えば、シューベルトやベートーヴェン、ドボルザーク、ブルックナー。ベートーヴェンに至っては、クラ
シックを少しかじったことのある人に「ダイク」と言えば、ベートーヴェンの交響曲第9番を思い浮かべる
というくらいの地位を得ています。
そんなことから、マーラーは自分も第9番を書いたら死んでしまうのではないだろうか、と不安になってしま
うわけです。
そこで、9番目に作曲した交響曲には、番号を付けることを避けて、「大地の歌」なんていう別名まで
付けました。
そして、9番を作り上げると、休む間もなく10番を作曲し始めたと言われています。
しかも悲しいことに、この10番は未完成のままです。途中で亡くなってしまったから。
彼は1860年の7月7日に生まれたので、この作品に取りかかり始めた1909年には、49歳になっていました。
この2年前には長女を亡くし、宮廷指揮者を解雇されてウィーンを追われ、妻との関係もギクシャク
してきて・・・彼の心はグチャグチャになってきていたようです。
さらに、自分の心臓病も指摘され、未来への希望は少なくなっていたことが予想できます。
そんなことから、結局自分の最期を予感しながら作曲することになりました。
こんな彼の心境は、一見 〜というか一聴〜 すると感じ取ることができますが。
これを止めてしまったら、自分は自分でいられなくなるかもしれない、そんな感覚だったんじゃないかなぁ。
なんだか、死とか「告別」というテーマを全面に押し出してきてしまいましたが、そんなに暗いことばかり
じゃないです!
マーラーは、作曲家であると同時に、多忙な指揮者でもありました。
だから演奏会のシーズン中はなかなか作曲活動を行なえず、シーズンオフに山小屋に籠もって作曲をして
いたようです。
それを知ってか知らずか。
私は1楽章冒頭のス―――――――ッとした透明感が大好きです。
昔、映画で朝もやのかかった湖というのを見たことがあって、そんな感じです。
そんな美しい風景も、いつの間にかマーラーの心を描写するような旋律に変わっていくのですが。
今現在、彼の心のザワザワに翻弄されている団員は少なくありません。
であれば、たった1度の演奏会に来てくださったお客さまは、もっと大混乱となるに違いない。
けれど、演奏会はもちろん1度きり。
どうしたらマラ9の演奏会を、お客さまの記憶に印象深く残すことができるのか。
そんなことを考えながら練習しています。
ラヴェル ボレロ
管弦楽の魔術師との異名もとる、モーリス・ラヴェルが作曲したバレエ音楽です。
こうして名前で紹介されると、「ん?」と思われる方もあると思います。ですが、CMを始めテレビで
使われることもあるので、1度は耳にしたことがあるのではないでしょうか??
バレエ音楽というと、真っ先に組曲が思い浮かぶので、ボレロのバレエってどんなもの?と実は
長いこと思ってきました。
というわけでご紹介しますね。
ここはセビリアのとある酒場。
1人の踊り子の少女が舞台で足慣らしでしょうか。1人で控えめに踊っています。
お客たちは見向きもしません。
やがて、興が乗ってきて、彼女の振りも大きくなってくる。
すると、お客たちが次第に彼女の踊りに目を向け始めます。
中にはつられて一緒に踊りだす者も。
徐々に徐々にヒートアップしていき、仕舞いには、みんなでお祭り騒ぎ☆☆☆
こんな風に、予想通りというか予想外にというか。筋書きは至ってシンプルなもの。
では曲の方は・・・というと、こちらもとってもシンプルです。
曲の底にあるリズムは、15分ほどの演奏中、一度も変わることなく繰り返されます。
旋律も、全曲を通して繰り返されます。
曲の構成要素は、リズムと旋律の他はありません。
最初のppから、最後のffへと、長い長いcresc.をしていきます。
調も終わりに近づくまで変わりません。
おいおい、大丈夫?と思われた方。心配は要りません。
ここだけの話、15分間のほとんどをpizz(弦を指ではじく奏法)で過ごす曲、演奏している間に飽きて
きちゃうんじゃないかとか思ってました。
けど、全然そんなことは無かったんです。むしろどんどん楽しくなってきます。
何でかははっきりとは分からないんですけど、例えば・・・・
最初のスネアと一緒にすごくすごく緊張する「pizzかすったらどうしよう・・」
ソロ楽器がどんどん交代していく「次は何だっけな??」
突然旋律から微妙な不協和音が聞こえようになる「それ本当に譜面通りなの?」
ハープがあるのにpizzだけが分散和音を担当する「色づけなのにリズムはボレロだし・・」
やっとarco(弓で弾く)になった頃には、大変な盛り上がりを見せてる「負けないよ」
それに、ずーっと同じことをやってきた舞台には一体感が生まれてる。はずです。
そんなところでしょうか。
これからもっともっと見つかるだろうし、何より当日には、お客さまにもボレロの楽しみ方を
見つけていただければな、なんて思います。